次のコードは「F」

前回の「チューニングの大切さ」からのつづき。

チューニングが整ったところで、お兄さんが

「じゃあ次のコードをやろう」

というので、またレッスンモードとなった。

「次はFね。」

とお兄さんが言うと、少し笑い、お姉さんもつられて笑っていた。

その笑いの意味は始めはよくわからなかったが、お姉さんがコードを押さえる形を見て、納得した。

すさまじい指の形をしていた。

Fのコードは「ドファラ」

Fのコードは、小学校の音楽の授業でいうところの「ド・ファ・ラ」だ。

「ド・ミ・ソ」や「シ・レ・(ファ・)ソ」に続いて有名な和音だ。

正確には「ファ・ラ・ド」というべきかもしれないが。

音を聞いた瞬間、明るくて清々しいイメージだった。

きらきらと輝くような音の響きで、とてもいい感じだ。

ただ、このFのコードを見たとたん、「何だそれは?」と思わざるを得なかったのである。

人差し指は全部の弦を押さえていて、中指も薬指も、そして小指までもが動員されている。

これはかなりの難関だ。

最初は押さえられないよ

お兄さんもお姉さんも

「最初は押さえられないと思うよ。というか音が鳴らない」

にやにや笑いながら言うので、また自分の中の「負けず嫌い」スイッチがオンになった。

まずは見よう見まねで押さえてみる。

人差し指は、全部の弦の1フレットを押さえているようだ。(これを「セーハ」とか「バレー」とか言うらしい)

中指は3弦の2フレット。

薬指は5弦の3フレット。

そして小指は4弦の3フレット。

まず、この形になかなかならない。

薬指と小指あたりが、プルプルとして位置が定まらず、人差し指はつりそうになった。

しばらく悪戦苦闘して、なんとかそれらしい形になったので音を出してみると、、全滅だった。

ボツッ、ポツッ、ポ、ポン、ポ、ポン、と指腹に触れた鈍い音が順に聞こえた。

まるで和音どころではない。ひどいものだった。

最初のカベがFのコード

「仕方ないよ。最初は絶対ムリだから。」

とお姉さんがフォローするも、くやしい自分としては、何とか音を出したい。

でも、2つ3つ音がクリアに出たかどうかというので精一杯。

ポツポツ音が必ず混じる状態だ。

「ギターを始めるとまずこのカベにぶちあたるんだよね。」

お兄さんが説明する。

「Fでつまずいてギターをやめる人って多いよ。」

お姉さんも続いて付け加えるが、綺麗な「ドファラ」を弾いて微笑んでいる。

「どうやったらできるの?」

と、「練習あるのみ」という答えを予想しつつ質問してみると、

「やっぱり何度も弾いていくしかないんだけど、」

「・・だけど?」

「裏技もあるんだよね。」とお兄さん。

その裏技とやらを教えてもらった。こんな説明だった。

Fコードの裏技

ギターコードは前にも触れたが、目的とする和音の構成音を鳴らせばいいのだから、6本の弦を必ずしも全部使う必要はない。

最低、3つぐらいの弦で和音を作っちゃえばいい。2本の弦でもできないことはないが3本なら上等。

つまり、Fの場合は音楽の授業式にいうところの「ドファラ」というわけだから、このドファラを作る。

Cの時のように、人差し指で2弦1フレットで「ド」、中指は3弦2フレットで「ラ」、薬指は4弦3フレットで「ファ」となる。

こうすると、人差し指はCコードと同じ位置、中指と薬指は、位置関係と距離はCの時と似ていて、Cでは4弦5弦だったけれど、Fでは3弦4弦になる。

つまり、Cをまず押さえて、人差し指は固定したまま、中指と薬指をまとめて同時に、3弦4弦に並行移動させればよい。

という内容だった。

最初は簡易Fコードで進めるといい

なるほど、やってみるとそんなに難しくなかった。

「これは簡易Fコードだから、押さえた弦しか鳴らしちゃだめだよ」

とお兄さんが言う。

押さえた弦のみ鳴らす、というのはそれはそれでまた難しいが、正式のFを押さえるよりははるかに簡単だ。

実際には、人差し指で1弦と2弦の両方の1フレットを押さえるのがベターだとか。

人差し指の腹で2本の弦を押さえるとか。これも、6本の弦の「セーハ」に比べれば簡易だ。

簡易Fコードを習い、「ドファラ」を体感できたのでそれなりに満足した。

しかし内心では「パーフェクトのFを早く弾きたい」と思う自分もいた。

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